ガープス・サイオニクス・リプレイ
第1巻「水晶の聖骸」

GM  それじゃあ、キャンペーン第一話を始めるぞ。

プレイヤー (パチパチパチパチ)

GM  前述したような理由で、みんなはKAGAグループ警備部警備一課に所属することになったんだ。それからしばらく過ぎたある日、
    みんなのところに木場のところから「本部のミーティング室に急いで集合してください」というメッセージが届くよ。

ジン  じゃあ俺は木場さんが怖いから、テケテケと急ごう。俺は木場さんの恐ろしさをよーく知っているからな。

ジョー じゃあ、おれもついていく。

ジン  よう、大うそつき。(ジョーは、「虚言癖」の特徴を取っています)

小田切 信用のなさを見たわね。(小田切さんはここにはいません)

GM  ジンとジョーがミーティング室に来ると、残り三人はすでに席に着いているよ。

ジン  ところで他の連中ともう顔合わせはしてあるのか。

GM  ジンとジョーは知り合いだけど、それ以外はお互い初対面だよ。

ジン  見たことがない顔が居ることを、いぶかしんでおく。

ジョー (ポーズを取りながら)今日は、俺のパーティーにようこそ。

小田切 何なの、この人。

ジン  眼中にない。

ジョー どうしたジン。あまりしけた面をするなよ。

ジン  よるな、さわるな、息をするな。

ジョー はっはっは、相変わらずきついな。

小田切 変な人たち。

物部  ふん、あの黒人がジョーでジンと呼ばれているのは日本人かな。

GM  君らが騒いでいると、木場が部屋に入ってくるよ。



 プレイヤーキャラクター(以下PC)たちは、なおも騒ぎ続ける。



木場  あのー、そろそろ始めたいのですが。

ジン  木場さん、ここにいるのが、新しいチームメイトなんですか。

木場  ええ、仲良くしてください。

ジン  この「うそつき」はまだわかりますが、残りは手品師、チーマー、OL。これだけそろえて何をさせるつもりです?

ジョー 落語をするに決まっているだろう。

ジン  おのれは、ひっこんどけ。

物部  ずれてるな、何だあの黒人は。

木場  これからチームを組んで活動してもらうのですから、もっと仲良くしてください。

ジン  (物部を指さしながら)チーマーとチームを組むんですか。

木場  そのチームとは違いますよ。

物部  (ジンを指さしながら)木場のダンナ。とりあえずこいつ撃ち殺していいか。

木場  駄目です。(ちょっと怒る)あまり時間がないのでそろそろ本題に入ります。

物部  ちっ。

ジン  木場が怖いので黙って聞く。

木場  では、初めてこの組織に入った方もいるので、KAGAグループ警備部について簡単に説明します。
    まず、我々の主目的は、超能力者の保護、及び世界各地の遺跡から発掘されるオーパーツの収集です。
    ちなみにオーパーツは「当時の文明レベルではあり得ないはずの工芸品など」を指す言葉ですが、
    我々の言うオーパーツとは、現代の文明レベルでも存在していない物のことです。
    時には危険すぎるオーパーツを破壊、封印することもあります。

ジョー 「スプリガン」か。(小学館のコミックです)

GM  影響を受けているのは確かだが、かなり違う物にしているぞ。

木場  次に、我々が敵対している二つの組織ですが、一つはGAIA教団。通称教団です。
    もう一つはロックバレー財団、通称財団です。

ジン  前から思っていたんですけど、こいつら共同作戦採ってこないんですか?

木場  それはあり得ません。お互いの組織の主義主張や、目的が違いすぎます。

葉山  どんなふうに?

木場  まず、教団の主目的は「神」の降臨であり、彼らにとって神の力である超能力を使えるのは、
    彼らの認めた神官だけでなくてはなりません。それ以外の者が使う超能力は悪魔の力であり、
    超能力者は悪魔だと考えています。彼らにとって我々や財団は、悪魔の力を借りる悪魔崇拝者なんですよ。

葉山  無茶苦茶な事言うな。

木場  彼らの現在の活動は、神・・・・・・と彼らが呼ぶものの復活と、復活のための基盤づくりです。

小田切 基盤づくり?

木場  平和で豊かな時代に「神が復活した」と言ってもありがたみがないでしょう。ですから世の中を一度荒廃させるんですよ。
    例えば、暴走族やチーマーなどに武器を与えて殺し合いをさせたり、ドラッグをまいたりというふうに。

小田切 狂ってる。

物部  (低い声で)奴らは俺が潰す。

木場  彼は、教団と敵対しているところを勧誘しました。

ジン  なんと。こいつ教団に敵対していたんですか。

葉山  財団の方は?

木場  財団の方はわかりやすいですよ。超能力者もオーパーツも全て兵器利用が目的です。

小田切 なるほどね。

木場  「テレポーター」が一人いれば、爆弾一個で敵の殲滅が可能です。

ジン  他にも要人暗殺、機密文書の奪取と使い方は様々ですね。

木場  協力を断る超能力者を洗脳して使うこともあり、その手口は悪辣ですね。
    そんなわけで、我々と他の二つの組織はどうやっても折り合いがつかないんですよ。

ジン  要するに俺たちは「正義の味方」なんだよ。少なくとも今はな。

小田切 物は言いようね。そういうあなた達はどう違うの。

木場  うがった意見ですね。確かに我々も超能力者を他組織に対抗するための兵器として使っていますから。

ジン  まあ、俺はビジネスとして割り切ってますから、別に気にしていませんよ。

物部  俺も教団の奴らを潰せるなら、正義でも悪でも関係ねえな。

ジョー おいおい、しけた面をするなよ。パーッといこうぜ、パーッと。

ジン  おのれはお呼びでないわ。

小田切 さっきから黙っていると思ったら、何を言い出すやら。

木場  ジョー、以前あなたが倒した敵の肉親が、敵討ちに燃えているらしいですよ。注意してください。

ジョー だーいじょうぶ!全部ジンの名前出しといたから。

ジン  ぬおーっ!



 他一同爆笑。



ジン  GM。ジンは怒ったよな。(ジンの「テレパシー」は興奮時にしか使えません)

GM  怒りゲージ満タンで、体が赤くなるくらいにね。

ジン  超能力「精神剣(テレパシーの応用技)」を出す!(コロコロ)発動成功。ジョー、その辺にしておけ。

ジョー おいおいジョークだよ、アメリカンジョークだ。ハーハッハッハッハッ。

GM  木場が、つかつかと歩み寄ってきたかと思うと、二人をぽかぽか殴る。

木場  (かなり怒って)少し静かにしなさい。

小田切 なんか、すっごく不安。

ジン  き、木場さん、悪かったよ。俺も別に本気でやっている訳じゃないですよ。でも・・・・・・。

GM  ジンの前にある机が、床ごと陥没する。

木場  静かにしなさい。

小田切 この人が一番怖い。

ジン  わ、わかりました。俺はあんたに逆らうつもりはありません!

物部  (復讐は)一人でやっていた方が良かったかも、と心の中で思っておく。

ジョー さあ、木場さん歌いましょうや。ハーッハッハッハ!

GM  木場が、君の方に振り向くよ。

ジン  木場さん。こいつは押さえつけておきますから、煮るなり、焼くなり好きなように。
    さあ、どうぞ、どうぞ。(ジョーを押さえつける)

小田切 この人たち怖い。

葉山  やっぱり協力するのやめようかな。でも、今は言い出せない。

物部  本気で一匹狼のほうが良かったかも、と心の中で思う。

ジン  まあ、冗談は置いといて、こんなのでもうちの組織の大事な戦力だし・・・・・・(と言いながら、まだ押さえつけている)

木場  確かに君たちのグループは、うちの組織に現在所属している特別班の中でも二番目か、三番目かぐらいの力を持っているでしょうね。

物部  と言うと、一番強力なのはどんなのだ?だいたい、こいつらの素性も俺はよく知らないんだぞ。

ジョー おっと、そう言えば正式な自己紹介がまだだったようだな。



 PCたちはまだ正式な自己紹介をしていません。

 もう何ページ目だよ。



ジョー しまった、まともなことを言ってしまった。

物部  言えばいいんだよ、言えば。(怒)

ジン  そうだな、じゃあまず俺から。



 PCたちはやっと自己紹介をしました。

 でも、今、何ページ目?(泣)



ジョー と言うわけで、みんなよろしく。

GM  (え?まともなあいさつを)

ジョー じゃあ、みんな俺に付いてこい。

GM  (あ、やっぱり)



 一同沈黙・・・・・・。



ジン  (ジョーを押さえ込んで)と、言うわけでこいつを含めてお前たちのお守りは俺が担当する。

小田切 自分がリーダーだとでも?言ってくれるじゃない。

物部  カキンカキン。(鉄製の義手を鳴らしている擬音です)

葉山  言ってくれるな。でもジョーがリーダーと言わないだけましか。

ジン  木場さん。で、俺たちをここへ集めたって事は・・・・・・。(忘れているかもしれませんが、ここはミーティング室です)

木場  ええ、あなたがた新チームにしていただく作戦(ミッション)があります。

ジン  やっぱり。

木場  まず、皆さんには南米の某国に飛んでもらいます。

全PC 南米?

ジン  南米といえば、有名なのはコーヒー、エメラルド、そしてドラッグですね。

物部  アステカ文明・・・・・・は中米のメキシコだったな。どこに行くのかは知らんが、言語は英語で通じるよな。

ジョー それなら俺も英語だぜ。

木場  言語の心配をすることは無いですよ。

物部  え?

木場  皆さんが行くのは、市街地ではなくジャングルの中です。

ジョー あうっ。

木場  皆さんは、水晶ドクロを知っていますか?

物部  ああ、聞いたことがある。

木場  二年ほど前から教団が発掘している遺跡がありまして、その遺跡には神の聖骸が眠っていると伝えられています。

葉山  嘘くせー。子供でも信じないぞ。

木場  ところが、そこから水晶ドクロならぬ、全身骨格が掘り出されたんです。

ジン  水晶スケルトン。

木場  まさに、そうとでも呼ぶべき物です。それが、かなり怪しい物らしくて。

物部  確かにそりゃ怪しいが。

ジン  具体的にどう怪しいんだ。

木場  正直、まだわかりません。ですがその水晶スケルトンが発見されてから、急に教団側の警戒が強くなりまして。
    我々が送り込んだスパイとの連絡も取れなくなりました。そこで、皆さんに現地で水晶スケルトンの調査をお願いしたいのです。

物部  一つ聞くが、教団の奴らは皆殺しにしてもいいな。

木場  それはご自由にどうぞ。

小田切 かくして、また賞金首の額が上がる訳ね。

物部  別に構わん。

木場  では、今から一時間後に出発していただきますので、用意をしてください。なお、ジャングル用装備一式と食料などはこちらで用意します。

物部  自分の部屋に戻って、愛銃を取ってくる。
    俺たちってどこに住んでるんだ?

GM  本社ビルの近くに、警備部専用の寮があって各自に個室が用意されてる。結構広くていい部屋だよ。

小田切 あたし、仕事があるんですけど。(小田切さんの本職はOLです)

木場  そうですね、ちょっと待ってください。

GM  木場はどこかに電話しているよ。

木場  ・・・・・・ええ、そういうことで・・・・・・、話がつきました。小田切さんは本日付けで、KAGA本社警備部に出向になりました。

小田切 ・・・・・・ああ、そう。

物部  ホローポイント弾と、炸裂弾ももらえるか?

小田切 あなた、戦争でもするつもりなの?

物部  場合によっては、破壊活動もあり得る。

木場  そうですね、一応手配しておきましょう。後から工作部隊も送るつもりですが、準備しておいて損はないでしょう。

ジョー ところで、木場のダンナ。

木場  何でしょうか?

ジョー 今回のミッションに、ボーナスは出るのかい?

木場  ご心配には及びません。作戦が成功すれば何と・・・・・・。

ジョー 何と・・・・・・。

木場  あなたの借金が、十分の一減ります。

ジョー ノォォォォーッ!

木場  喜んでいただけて、私もうれしいです。

葉山  じゃあ、十回クリアーで借金はチャラかな?

物部  ただし、生き残っていたらな。

ジン  いや、多分利子返済だけで終わりだろう。

小田切 何でこの人そんなに借金があるのよ?

木場  ええ、半年前までこの本社ビルの地下には、KAGAグループの情報を一手に管理するマザーコンピューター「ローザ」があったんです。

物部  あったんです?何で過去形なんだ?

木場  それを事もあろうに、トレーニング中に壁を貫いて破壊した人がいたんです。

ジン  木場さん。あの時のことは今思い出しても・・・・・・。

葉山  誰が壊したの?

ジョー (しらじらしく)誰がそんなひどい事を?

小田切 言うまでもないか。

木場  その時の被害総額は・・・・・・。

ジン  俺はあの一件で、世の中に本当に天文学的数字があることを知りましたよ。

ジョー (胸を張って)ま、しょせんメイド・イン・ジャパンといえども俺の念動の前では無力ということか。

小田切 威張れないって。

木場  話を元に戻します。早く用意をしてきて下さい。

ジン  現地ではジャングルの中を移動するんですか?

木場  目標の近くまではお送りしますが、後は歩いてもらいます。

ジン  じゃあ、車の技能は役に立ちませんね。

物部  俺もだ。

木場  私たちでお送りできるのは、敵の哨戒範囲ぎりぎりまでです。半日は歩いてもらうことになるでしょう。

ジン  まあ、それくらいは仕方がないでしょう。

ジョー 俺、半日も歩くのかったるいな。

ジン  (怒)木場さん、メンツ変えましょう。

ジョー ジン、そうカッカするな。血圧上がるぞ。

ジン  よけいなお世話だ。俺はカッカしてるときの方が調子いいんだよ。(興奮時でないと力が使えないからな)

小田切 どうもこれは人選間違ってるみたいね。何を基準に編成したのよ。

木場  それをあまり言わないで下さい。同程度の能力を持つ者を基準に集めたんですから。

ジン  全員200CPで作成したキャラクターか。



 一同爆笑。



GM  (PCが、自分のCPを知ってるわけないだろ)

木場  用意の方は出来ましたか?

物部  ああ、いつでもいいぞ。

木場  では、空港に向かって下さい。

ジョー もう?

木場  ええ、今すぐです。

ジョー 日記を持って行かなくちゃね。

GM  (何故?)

物部  さて、タバコ、タバコ。(物部君はヘビースモーカーです)

GM  じゃあ、車で空港に向かうよ。

ジン  それでは、顔の迷彩ペイントを。

小田切 今からそんなことしてたら、飛行機の中で怪しまれるでしょ。

木場  確かに少し気が早いですが、専用機なので問題はないですよ。

ジン  (鼻で笑って)これだから素人は。

小田切 こいつ!

ジョー どれ、ペイントなら俺も手伝ってやろう。ちょいちょいちょいっと。あ、緑じゃなくて赤だった。



 一同爆笑。



ジン  (ジョーを殴る)お前の顔も、赤くペイントしてやったぜ。

ジョー 軽いジョークだったのに。

GM  馬鹿やってる間に空港に着いたよ。車は、専用機のタラップに直接横付けする。

小田切 パスポートは?出来るまでに一ヶ月はかかるわよ。

葉山  どうなるの。

物部  密入国か?別にいいがな。

木場  ちゃんと手配しておきました。どこの国でも通用する「本物以上」の物です。

ジン  (再び鼻で笑って)嬢ちゃん。あんたの常識で語ってもらっちゃ困るね。まあ、あんたもその内、慣れるとは思うがな。

小田切 くっ。

GM  君たちが乗り込むと、専用機はすぐ滑走路に出て離陸準備を始める。

木場  私には、日本での仕事がありますのでご一緒できません。それでは、皆さんの活躍を期待しています。

GM  それだけ言い残すと、木場はみんなの前からかき消すように消えてしまう。言うまでもなく、超能力「自己転移」を使ったんだけどね。







本誌に続く。


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